定年後に家を建てる3 ~相続登記を自分でやってみる~

 実家の建て替えを進めるにあたり、亡き父親名義になっていた不動産(土地・建物)の相続登記を司法書士にはお願いせずに自分でやってみました。自分でやってみた感想を先に言ってしまうと、「自分でやってもあまり楽しくないが、節約できる金額はでかい」です(笑)。自らの手足を動かし頭を働かせて楽しむ動楽者としては不評ながら、実利はあるってことです。ということで、以下に、やってみた内容を作成した文書の文案も含めて書いておこうと思います。ただ、その前に、自分でやらずに司法書士などへお願いした方がいいケースについて注意書きさせてください。あと、私は自分の場合の相続ケースのみを前提にネットなどで情報を集めて行ったので、私と全く同じ状況以外の場合は当てにならないと思って、自分で調べてください。まぁ、自分でやろうと思うのなら自分で情報も集めるのは当然ですね。

クレーンとトレイン #165216

相続登記を自分でやらない方がいいと思われるケース

  1. 遺産額が単純計算した相続税控除額を上回る場合
  2. 相続内容が複雑な場合
  3. 十分な時間が取れない場合

 1.の場合は、やり方によっては節税できたのに課税されてしまった等、下手すると金銭的損害を被るのでやめておくべきだと思います。そんだけ遺産額も大きいのですから、お金を出して司法書士や弁護士に依頼しましょう。また、1にも関係しますが、2.の場合も自分でやるのはやめておいた方が無難です。ただ、何をもって「複雑」と判断するか自体もよくわかりませんよね。判断の基準としては、ネットなどに相続登記例として記載があるかないかでしょうか。ネットで色々調べたけど、この場合はどうなるんだろうか、と疑問が残った時点でやめておいた方がいいでしょう。法務局が提供している「相続手続に関するよくある質問と回答」という文書には、結構いろんなパターンの相続について回答が載ってたりしますので一読をお薦めします。また、法務局や司法書士会による無料相談とかもあるようですので、そちらで相談してからどうするか決めてもいいかもしれません。
 3.については、結構な手間と時間を取られますよってことです。まぁ、それによって節約できる金額は十分に元が取れる額ではありますが、情報収集や文書作成以外にも、市役所や法務局へは平日へ行かないといけませんし、相続人が複数いる場合は、その調整も発生します。残業続きで多忙だとかいう人は無理せず依頼しましょう。ただ、その中でもこれまではかなり手間がかかっていた戸籍謄本類の収集について、今年度から戸籍謄本の広域交付制度が始まったので、かなり楽になったのは確かなようです。私の場合でも、実家のある市役所ですべての謄本を1日で取得できました。司法書士によっては、謄本の収集とかは依頼主が行い、それ以外を司法書士に依頼して安くあげるとかいうこともできるそうなので、検討する価値はあるかもです。

父が亡くなり、相続手続きを行わないまま母が亡くなる

 さて、私の場合はといいますと、相続額は控除額を大きく下回り、無職定年退職者ということで平日に時間も取れますので、1.と3.はクリアです。ただ、2.については少し問題がありました。というのも、不動産の名義は父になっていて、父が亡くなった際に相続登記をしていなかったからです。父が亡くなったのはコロナ禍真っ最中だったこともあり、そのうちと思っているうちに不意に母も亡くなってしまいました。ただ、これって結構よくあるんじゃないかと思ったので、ネットで調べたところ、こういうのは数次相続と言うそうで、相続手続きに必要な遺産分割協議書の文例も載っていたりしました。なので、相続手続き、自分でやってみっか、と動楽者の軽いノリで取り掛かります。

まずは相続手続きについての情報収集

 ネットでググってみたり、Youtubeの動画を見たりしてざっと調べつつ、本元の法務局のホームページから、登記手続ハンドブックをダウンロードして熟読します。やるべきことは、とりあえず二つ。相続人を確定するために両親の戸籍謄本を出生まで遡って集めることと、遺言書はなく、私には兄弟がいるので、遺産分割協議書を作成することです。この時点では、そんなに難しくなさそうな印象でした。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、相続登記するためのサポートも厚くされているように思えたせいかもしれません。なんか、自分で相続登記しても大丈夫、って感じた次第です。しかし、実際にやってみると色々とややこしかったです。その原因は、公的関係での実務作業による細かい決まりや作法的なものがあり、当然、このような手続きは初めてなわけで、色々と調べたり確認したりと煩雑だったせいです。また、間違うとやっかいという意識も働き、無意識にプレッシャーを受けていたことも影響したかと思います。お金があるなら、外部に依頼してやってもらうことをお薦めする所以です。

戸籍謄本を集める

 事前のリサーチ段階では、これが一番手間がかかると思ってました。両親の出生地の役所とかへ請求しないといけないと思っていたからです。実際は、最後の本籍地のあった市役所で一括で一度に集めることができました。今年の3月から(?)、戸籍証明書の広域交付制度が始まっていたからです。待ち時間こそ2時間ぐらいかかりましたが、戸籍謄本10通程度が全部いただけました。ただし、手数料は5千円ちかくかかりましたが。10通にも及ぶ手書きも混じった謄本を眺めながら、この広域交付制度がなかったら、かなり大変なことになっていたことだろうと思いました。

遺産分割協議書を作成する

 私のケースでは、遠隔地に住んでいる弟が一人いて、遺産については不動産を私、その他預貯金等金融資産を弟が相続するということで凡そ話がついていました。この場合、不動産を一人の相続人で相続するというのは手続きが簡単になるポイントです。問題は、先にも書きましたが、父が亡くなって相続が発生したまま手続きをせずにいる間に、相続人の一人である母がなくなってしまったという点です。この場合は、遺産分割協議書をどのように書けばいいのか?結構ありそうなパターンだから、ネットとかに例文めいたものがあるだろうと探してみて、何点かみつけてそれをもとに協議書を書いてみました。
 ここでひっかかったのは、相続手続き特有の言い回しや用語の使い方でした。複数の例文などを参照しながら、切り貼り的に作ってみました。体裁上は、なんとかそれらしいものが出来上がりました。もともと、遺産分割協議書にはこれといった決まりきった様式がないらしく、なので自分でも作れるだろうと思えたのですが、落とし穴がありました。結論から言うと、本質を理解しきれていなかったので、この協議書のままでは問題があったのです。

母の遺産の扱い

 父の遺産(不動産と金融資産)について、数次相続を一度に行う前提で分割協議書を作成したのですが、母も独自に金融資産を持っており、これについても相続しなければいけません。相続開始のくだりから初めて分割協議成立を書くところで、母の遺産についての記述が抜けていることに気づき、急遽その文言を入れて再作成することに。ところが、これもおかしいと気づきます。気づいたのは、相続登記に関するQ&Aにあった以下の記述です。

最初の相続が単独相続である場合(遺産分割、相続放棄又は他の相続人に相続分のないことによる単独相続を含む。)に限り、登記原因及びその日付を連記した上で、登記名義人から最終の相続人名義に直接相続登記を申請することができます。

 つまり、最初の相続(父が亡くなって開始した相続)の後、不動産の相続登記をすることなく相続人の一人である母が亡くなり、最終的にその不動産を私一人が相続することで遺産分割協議が成立した場合(単独相続)に限り、父名義の不動産を最終相続人である私名義に直接相続登記できるというわけです。これが前提の相続に、母の遺産の相続が入ってくるとややこしくなります。てなわけで、最終的には、父の遺産についての分割協議書と母の遺産についての分割協議書を分けて作成しました。ちなみに、この問題以外にも、協議書に記載していた年号を間違って記述してたりして、書き直してたりします。もちろん、事前に気づいて直していたのですが、最終的に書き直す際に、直してない方のファイルをもとに作成してしまったというわけです。ははは、ドタバタです(笑)。まぁ、現役時代もこういうドタバタはよくやったものですが、無職定年退職者となったのですから、こういった公的実務作業(特に初めてやる作業)はやめておいた方が楽しく生きれます。さて、参考までに、最終的に私が作成した遺産分割協議書の文案を載せておきます。

                 遺産分割協議書


被相続人 〇〇〇〇が令和2年 月 日に死亡し相続が開始したが、遺産分割に関する協議を未了のまま相続人 ◇◇◇◇が令和5年 月 日に死亡し相続が開始した。その後、被相続人 〇〇〇〇の遺産を分割するにつき、共同相続人である△△△△及び××××にて遺産分割に関する協議をなしたところ、下記のとおり協議が成立した。


                    記


被相続人
 最後の本籍地 ***************
 最後の住所  ***************
 氏名 〇〇〇〇(令和2年 月 日死亡)

相続人兼被相続人
 最後の本籍地 ***************
 最後の住所  ****************
 氏名 ◇◇◇◇(令和5年 月 日死亡)
 
 
1.相続人△△△△は以下の遺産を取得する。

 【土地】

  ・所在 *******
  ・地番 ******
  ・地目 宅地
  ・地積 **㎡

  ・所在 *******
  ・地番 ******
  ・地目 宅地
  ・地積 **㎡

  ・所在 *******
  ・地番 ******
  ・地目 宅地
  ・地積 **㎡

  ・所在 *******
  ・地番 ******
  ・地目 宅地
  ・地積 **㎡


  
 【建物】
 
  ・所在 *******************
  ・家屋番号 *******
  ・種類 居宅
  ・構造 木造瓦葺2階建
  ・床面積 1階 **㎡
        2階 **㎡


2.相続人××××は以下の遺産を取得する。

 【預貯金】
  ・JAバンク 定期積金 口座番号******
  ・ゆうちょ銀行 通常貯金 記号***   番号*****
  
 
本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産は、相続人全員がその財産について再度協議を行うこととする。


以上、本協議を証するため本書を2通作成し、各相続人がこれに自署名押印のうえ、各自1通を保持するものとする。


 令和6年 月 日
 
 相続人兼◇◇◇◇相続人
 【住所】

 【氏名】
 
 相続人兼◇◇◇◇相続人
 【住所】

 【氏名】
 

いよいよ相続登記申請書を作成して法務局へ提出する

 ここまで来たらあと一息です。法務局のホームページから申請書をダウンロードして、慎重に必要事項を記述していきます。老眼でしょぼつく目をこすりながら完成。ほかに必要な印鑑証明書(遺産分割協議書分)と住民票(被相続人の除票と不動産を相続する相続人の住民票)、固定資産税明細書を揃えます。さて、後は、戸籍謄本類ですが、このままだと返還されないので、せっかく5千円近く出して取得したこともあり、返還請求の手続きを行いました。謄本のコピーをとって全部に契印を押して、「原本に相違ありません」と記述して署名捺印していっしょに提出すればいいのですが、なんせ10通ほどあって分厚くなります。ここは、「相続関係説明図」を作成提出してすます方を選びました。説明図があると相続関係もわかりやすくなってスムーズに進むとも思いましたし。この説明図はエクセルで作成したのでここでは載せませんが、1点だけ相続人の肩書につける用語が独特でしたので書いておきます。

(相続)   対象の不動産を相続する相続人に付けます
(分割)   遺産分割の結果、対象の不動産は相続しない相続人に付けます

 最後は、不動産登録免許税を計算して記載し、印紙貼付用の白紙を一緒に綴じて契印を押して完成です。って、簡単に書きましたが、記載事項に間違いがないか何度も見直しながら作成。ちなみに、遺産分割協議書は両面印刷でも可とのことで、契印押すのがいやで両面印刷で対応。しかし、相続登記申請書は両面印刷不可、というか、印紙貼付用の紙を綴じる時点で契印必須です。印紙は、法務局に郵便局?の出張窓口があって、そこで購入して貼りました。法務局へ提出すると、登録完了予定日が書かれた用紙を渡されます。その予定日以降に、その用紙と印鑑と身分証明書を持参して登記完了証と登記識別情報を受け取ることになります。何か問題があれば、法務局から連絡がありますので、登録完了予定日まで連絡のないことを願いつつ、これで相続登記作業はひとまず終了です。

と安心したのもつかの間、数日後に法務局から電話が….

 さっそく電話とは、どっかミスったか、と焦りましたが、「書類の方は問題ないのですが…」と電話口で言われて少しほっとします。「免許税の計算が間違っていて、非課税分があるので多く貰い過ぎになってます。後日返却になるので、返却用の銀行口座番号を受け取りの際に提出してください。」とのことでした。後で考えてみるに、土地が4分割されていて、そのうち二つの評価額が100万円以下でした。なるほど、その分は非課税ということか。言われてみればそうだわ。登記手続き上はそのまま進めれるそうなので、やり直しとかではなくてよかったです。

相続登記を自分でやってみた感想

 ということで、無事に相続登記完了となりましたが、慣れないこと、特に公的な作業をやるのはストレス度が高いです。ただ、これで6~10万円(ネットとかで調べた相場からの情報です)程度節約できたと思うと、作業量と対比するととてもでかいです。これでPentax17が買えます!うれしい!
 相続登記が義務化されたことで、自分でやるというのも一般的になるのだろうと思います。そのための情報提供とかもされているし、なにより一番大きいのは、戸籍謄本等の広域交付制度が始まったことです。あれがなかったら、確実に一か月ぐらい余計に手間がかかったかと。あと思うのは、今後は速やかに自分で相続登記、ってのがトレンドかもしれません。というのも、被相続人が亡くなってそのままにしておいて、さらに相続人が亡くなってという、数次相続状態のようになると、リスクがあるなと。今回の私の場合は、特に面倒もなくできたのですが、この状態でさらに相続人が不慮に亡くなったりすると、相続人自体が増えてきてややこしい話になりかねないなと思いました。というわけで、最後に私が参照して役に立った文書をあげて終わりにします。いずれも、法務局が提供している資料になります。

  • 登記手続きハンドブック(法務局のサイトにある基本マニュアル)
  • 相続登記ガイドブック(概要編・詳細編) 特に詳細編はQ&Aが役立ちます
  • 相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等

Pentax17の予約再開まだかなぁ….
のんびりしていて初期予約分を手に入れられなかった私です。ていうか、速攻予約分完売とかマジですか?!

定年後に家を建てる2 ~小さな平屋でいいや、と思うも家づくりの大変さに気づき始める~

 家は人生で最も高い買い物、などと言われるようですが、自分の家を持つといっても大きくは次の3パターンがあるかと思います。

  1. マンション(新築・中古)を買う
  2. 一戸建ての建売り住宅や中古住宅を買う
  3. 土地に家を建てる

1と2は、既にある住宅を手に入れるという購買行動になりますが、3は買うというよりは、資金を出してハウスメーカーや工務店に家を作ってもらうという行動になります。定年前の時点では、私も中古マンションの購入や小さな中古戸建を買ってリフォームとかも考えていたので、意識としては「家を買う」という感じでした。しかしながら、最終的には実家を建て替えて住むという選択をしたので、3に近い「既にある土地に家を建てる」ことになりました。

湖畔 #164908
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