家は人生で最も高い買い物、などと言われるようですが、自分の家を持つといっても大きくは次の3パターンがあるかと思います。
- マンション(新築・中古)を買う
- 一戸建ての建売り住宅や中古住宅を買う
- 土地に家を建てる
1と2は、既にある住宅を手に入れるという購買行動になりますが、3は買うというよりは、資金を出してハウスメーカーや工務店に家を作ってもらうという行動になります。定年前の時点では、私も中古マンションの購入や小さな中古戸建を買ってリフォームとかも考えていたので、意識としては「家を買う」という感じでした。しかしながら、最終的には実家を建て替えて住むという選択をしたので、3に近い「既にある土地に家を建てる」ことになりました。
実際に家づくりの準備を始めたのは、実家の片づけが軌道に乗ってきて週二日の賃仕事もやめた4月からでした。最初は、実家の近くにあった住宅展示場の会社や名前を知っていたハウスメーカーに資料請求をかけてみました。というか、何から始めればいいのかわからなかったので、まずは資料請求というわけです。この時点で頭にあった建てたい家のイメージは、ずばり「小さな平屋」。これは、実家の老親が最後は全く2階へ上がることもなく(上がることができず)、2階は物置どころか、耐震不安要素にしかならない状態となったのを見ていたということと、これまで賃貸マンションの1階に住み続けていて、階段のある家には今更適応できないのではないかと思えたからです。この平屋問題は、また別に書きたいと思いますので、ここまでにしておきますが、実家はもともと建売一戸建てで敷地は30坪しかなく、建ぺい率60%でしたので、平屋を建てるとしても18坪程度となります。つまり「小さな平屋」です。がしかし、小さいと言っても家を建てるというのは大ごとだったわけなのですが、その頃の私にはまだ実感が伴っていなかったと言えます。
最初に話を聞きに行ったのは、実家近くにあった住宅会社です。近い、地元という点と、規格住宅の平屋が商品ラインナップにあってリーズナブルな感じだったからです。当時は私も住宅会社にどんな種類があるかもわからなかったのですが、そこはフランチャイズもやっている工務店系だが、独自仕様で地元展開もしている総合住宅会社でした。ま、普通の人は、最初はここまでわかりませんので、家づくりずぶの素人の私も当時は地元で手広くやってる会社程度のイメージでした。というか、その頃の私は住宅会社なんてどこも似たり寄ったりなんじゃないの、とかとんでもない思い違いをしていたくらいですから。そんな私が要件として挙げたのが、敷地30坪、床面積18坪、平屋、1LDK、暗室付き です。あ、最後の「暗室付き」ですが、これもまた別の機会に書かせてもらおうと思ってますので、ここでは流しておきます(笑)。
そんな、まぁ今から思えば呑気な家づくりスタートを切った私ですが、ほどなく意識変革を迫られることになります。そう、最初に提示された概算見積が想定予算をかなり超えていたからです。どの程度超えていたかというと、ここまでの金額はできたら出したくないなという価格でした。私の事前の想定金額が低すぎたのかというと、最終結論からするとそういうわけでもなかったです。理由の一つは、コロナ禍とその後のウクライナ戦争もろもろからのウッドショックに加えて人手不足によって、ここ数年で2割程度注文住宅の価格が急激に上がっていたこと。そしてもうひとつは、実家の解体費用、水道引き込み管の取り換え、地盤改良工事(これはまだ未確定段階)などなど、家の建築以外の費用が結構かかるのとこれもまた価格が上がっていたこと、でした。しかしながら、その時の私はそんな状況を知るよしもなく、ただただこりゃやばいなとショックを受けます。当初想定していた上限近くの資金が必要だと知らされたことで、こりゃもっと多くの会社を調べてしっかり比較検討して決めないといけないな、と認識を大きく改めることになります。まぁ、そこからあれがいいんじゃないか、こっちがいいんじゃないかと大迷走を始めるわけですが(笑)。
ちなみに、その衝撃の見積価格を提示した会社ですが、私が最初に希望した規格住宅系平屋ではなく、その担当者が手掛けていた天然木と漆喰の家というプランで提案してきたのです。しかも、こちらの予算にできるだけ近づけるため、漆喰ではなく漆喰調の紙クロスでの提案という。その後数か月で猛烈に知識を付けた私が最終的に下した判断は、天然木に金を吸われたアンバランスな家、です(笑)。なんせ、サッシはアルミ樹脂複合サッシで換気システムも第三種換気、加えて致命的なのは床面積18坪希望なのに見積は17坪という…いや、そもそも間取り提案すらないという有様でした。ただ、担当者はいい人でしたが、注文住宅というのは、その名の通り、会社という組織体に注文して家を建ててもらうわけです。やはり、どこで建てるかというのはとても重要なのです。
と書いたはなから言うのも憚られますが、実のところ、最終的に依頼先を決めた現時点で私が思うのは、営業担当者との相性、その知識量、実務能力というのも同じくらい重要だということです。どれだけ重要かというと、組織体としての会社選びと家づくりに伴走してくれる担当者の存在、この二点だけで見積額数百万円差を蹴って最終選択を行ったくらいに、です。正直、家づくりを始める前にこのような決断を自分が下すとは想像だにできませんでしたね。それだけ、家づくりというのは特殊で大変なことだったわけです。私の場合は、完全無職となって実家の片づけ以外は、家づくりのための活動に全力をかけられたので、完全に満足しているわけではないものの、この短期間(4か月程度)で結論を出すことができたと思っています。これが、仕事を抱えていたらと考えると、もう絶望的にすら思えます。ですので、家づくりがほぼ決まっている路線の場合は、できるだけ早く行動を始めるのがよいと思うわけです。ん?家づくりをするかどうか未定でも、手を付け始めるべきでは?という考えもあるかと思いますが、この場合は微妙かと思います。なぜかというと、時間が経つにつけて住宅建築のコストが上がっていくのが見えているからです。なので、いたずらに時間だけ掛けていると焦りが募ってくると思われるからです。人間、焦ると判断を誤ります。なので、家づくり未定なうちは、つっこんで動かない方が精神的にいいのではないかと私は思います。
ただし、定年後に家を建てるとなると、決断は早い方がいいと思います。私は、最初はキャッシュフロー的な意味でそう考えていたのですが、実際に家づくりをはじめてみて、老後の家づくりは気力、体力、認知力が十分なうちに取り掛かるべきだと実感しました。理由は、家づくりというのは「実務」だからです。対して、作品制作活動や趣味活動などは補助的な活動で、求められる要求や責任が軽いからです。これには、ちょっとした賃仕事も含めてもそうだと思います。実務をやり遂げた時の達成感はかけがえのないものですが、これは現役時代にやり遂げておくべきこと。いくら今どきのシニアは若いといっても、やはり年を経るにつれてほころびが出てきます。そんなほころびを見ないふりして生きるのは私の本意ではない。定年後は、そんなほころびも受け入れながらの「動楽者(自ら動いて楽しむ人)」でありたいのです。そういうわけで、定年後の家づくりは少しでも早い方がいい。自己の能力減退以外にもリスク許容度という点でもそうです。建築会社を決めて、依頼して家を建てる、それも数か月かけてというのは、資金額や残された時間の問題も含めて、リスクはかなり高いです。
さて、そんな「実務」の一つとして、次回は、自分で不動産の相続登記を行った話を書こうと思います。動楽者の性分で、独力でもできるんじゃないかと思い、相続登記をやってみました。結論から言うと、問題なくできたのですが、そのなかで、こういう「実務」は、定年後はできるだけやらない方がいいなと感じたのも事実です。特に過去にやったことがないような「実務」は、もうやめておいた方がいいかなと。とはいえ、お金の節約になったのはまぎれもない事実ですし、せっかくの体験なので、実際の文書文案も含めてブログ化しておこうと思います。私と全く同じパターンの相続なら、これで自分で相続登記可能ですと(笑)。