絵画と写真(カメピより再掲)

ちょっと前から、ずっと気になっている事柄。
もちろん、答えは出ない。
私にとっては、絵画と写真はまったく違うものだった。
どこが違うとか言えないけど、そう思ってた。
が、写真に興味が出てくるに従い、
絵画と比較して語られることがあることも知った。
そして、美術の世界からの写真へのアプローチがあることも。

が、依然として、写真と、絵画やら現代美術との間に
線引き、というか結界というか、八丁注連というか、
魂の境界を置きたい自分がいる。

1月のアサヒカメラ、田村彰英さんの講評の一部。
「写真表現は絵画とは違い、完璧では人の心をつかむことは
できません。心の隙間を見せること、すなわち破綻のある写真
こそ人々を惹きつけることができるのです。」

いつもながらクールだ。
これを読んで、尾仲浩二さんの私家版「あの頃、東京で・・」
の中にあったエピソードを思い出した。
絵描きをしている尾仲さんの知人がギャラリーへ来て、
尾仲さんの写真の構図をつまらないと批判したとき、
そこに居合わせた中平卓馬さんが、恐ろしいほどの
勢いで反論する言葉をほとばしらせたという話。

そんなこんなを思い浮かべたりするのだが、
この絵画と写真についての、肝心の自分の意見というものが
定かにならない。
まだまだ、ずっと考え続けなくてはならないってことだ。
そりゃそうだ。
写真について考え始めて、まだ数年なんだから…

でも、一つだけ絵画と写真に共通の事柄を見つけた。
それは、どちらも、長く長く見続けられる写真/絵画は
良い写真/絵画だということ。
じっと何十分でも、何度も繰り返してでも、見続けられる写真。
そして、そういう写真を撮りたいということ。

img絵画も同じ。
でも、ベクトルは違う。
絵画をじっと見続けると作者に行き着く。
写真をじっと見続けると作者の視線の先に行き着く。
それは作者と同じところに立ちながら、
違うものを見てもよいということ。
開かれた写真。

自分の撮った写真も含め、
巷にある写真はどうだろうか。
開かれているだろうか。