角のある鹿

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いつだったか、紅葉を撮りに奈良へ行った時、日も暮れて帰ろうかという頃に、立派な角を生やした鹿が颯爽と道を横切って行くのを見かけたことがあった。
奈良の鹿の角切り行事について小耳にはさんでいた私は、「ああ、あの鹿はきっと、人に捕まえられることなく生き延びて角を切られずにいるのだ。ボス級の強い雄に違いない。」と思った。
と同時に、一度立派な角を生やした奈良の鹿を撮ってみたいとも思っていた。
すると今年の夏も終わり、久しぶりに訪れた奈良公園のはずれで、立派な角を生やした体格のいい鹿がいるではないか。そばには、雌と思われる鹿もいる。やはりそうだ、角切りを生き延びた雄鹿は、こうやって雌を引き連れて周囲を鋭く見まわしながら歩きまわっているのだ。
私は、用心しながら慎重に撮影したのであった。1381kentmere100_014
ところが、人気の多い観光地に近づくにつれ、そこここに角の生えた鹿がいるではないか。
なんだ?どうしたというのだ?角切り行事が行われなくなったのか?
怪訝に思った私が、家に帰ってネットで調べて見ると、なんと鹿の角は1年で生え換わると言うではないか。
あの、ごつい角が、ほっておいてもぽろりと落ちるというのだ。
では、なぜわざわざ角を切るかというと、成長しきった角は硬くなっていて危険であるからということであった。
そういうことか、と思いつつ、しかしながら、日暮れ時に目前をさっと通り過ぎたあの鹿を目にしたのは、秋も終わりの初冬の頃だったはずで、やはり角切りを逃れていたことには違いない。そやつは、誰も引き連れず一匹で颯爽と夕闇へ消えていった。
あいつはやはり、ほかの鹿とは違うやつだったに違いない。
鹿の角のしくみがわかった今でも、私はそう思っている。

角のある鹿」への3件のフィードバック

  1. 1年で生え変わるんですか~!
    知らなかったです。ある程度まで伸びたら行事で切り落とされるんだとばかりに思っていました。
    確かに角があるままだと立派だけど怖いか…

    • 私もまさか1年とは思いませんでした。
      生え始めてしばらくは、角もやわらかくて中を血が通ってるそうです。なので、逆に鹿もムチャをしないとか…
      ところで、鹿は今どのぐらいの角になっているかわかるのかな。水鏡とかで確認するのだろうか…=^_^;=

  2. 知らないことって本当に多いですねよねぇ。
    一年であの角って生え変わっていただなんて。
    じゃあ、生え変わるときの古い角はいったい何処に行ってしまうのだろう?
    奈良公園のあちこちには、古くなった角がごろごろと転がってる地域でも
    あるんだろうか?
    つい、そういう余計なことを考えてしまうんですよね、いつも。笑

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