銀塩粒子さんの遺伝子(カメピより再掲)

仕事で梅田に出た折り、風邪でしんどくはあったが、
せっかくだからとニコンサロンへ行った。
「樋口 徹 [五冊の余熱] 」という写真展をやっていた。
3.11の写真も展示されていた。
展示されている被災地の写真は、すべてモノクロだった。
デジタル撮影されたものだけど、プリントはとてもきれいだった。
ずっと見て回ってもデジタル臭を感じなかった。
デジタルで撮るなら、こんな風にプリントしたいなと思った。

BESSA R2S + SC-SKOPAR35mm/F2.5 + HP5plus(NAROFINEP stock、EI1600増感)

BESSA R2S + SC-SKOPAR35mm/F2.5 + HP5plus(NAROFINEP stock、EI1600増感)

作家さんのプロフィールを見ると、宮城県出身の人だ。
被災地出身の写真家さんが撮った3.11の写真は絶対見たいと思ってたので、じっくり見た。
津波の疵跡が激しい建物などの写真も、モノクロであるが故に、堂々として美しくさえあった。
だから、ずっと見ていることができた。目をそらさずに見ていることができた。
会場で写真集を買った。

作家さんが在廊していて、直接購入した。
モノクロ写真がいいですねと言うと、
最近は、フィルムをスキャンしてプリントしてらっしゃるとのこと。
展示作品もスキャン+プリントの写真がたくさんあると。
これもそう、と言われた玉子の写真を見ると、諧調が豊かで、
それでいて優しい肌合いのプリントだった。
デジタルのつるりとした感じではなくて、
まさに、玉子の白い表面のような、肌触りのある白の諧調。

やはりそうだ。
紙焼きでなくても、銀塩粒子さんの遺伝子は
確実に受け継がれている。
むしろ、嬉々として新たな表情を見せてくれている。
それはネットに上げたフィルムスキャン画像にだって
受け継がれている。
透過光画像の中で銀塩粒子さんの遺伝子がきらめいている。
銀塩粒子さんにとっては、今の状況こそ、自由に飛び跳ねる
ことができる時代なのかもしれない。

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